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Book Guide for Rusties 1998/08

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A: 殿堂入り 5: とても面白い, 4: まあ面白い, 3: お好きに, 2: つまらん, 1: 金の無駄

8月


「人間は笑う葦である」
土屋賢二はあいかわらず鋭い。最初、この人は天性のこういうセンスの持ち主かと 思っていたが、もしかしたら論理学を駆使して書いているのかもしれない。 「AだからB」という常識があれば「AだからBではない」などがパッパッと 頭に浮かび、そこに出てくる面白い組み合わせを選んでいるのかと。

「未来さん」
「ケンペーくん」なみの稚拙な絵で疲れた。でもちょっと味がある。でも 私には絶えられない未来の話。

「デッドマン(1)」
つまらなかった。首に空いた穴の絵を書きたかっただけなのかも。

「文庫版メタルカラーの時代(3)」
4巻が見つからない。あいかわらず1/5万ミリを手の振動で感知する技術者や、 3000人のパートを使って自動改札機のテストをした話(去年から新幹線の 改札が自動化したが、あれはすげえ)など、山根一眞のくさった インタビューも打ち消してしまう技術屋さんの話に夢中。一つ一つが 短いので持ち歩きに最適だが(単行本はぶ厚かった)、もっと 詳しく知りたくなる話も満載。

「檻のなかのダンス」
「完全自殺マニュアル」の著者というと一番とおりがいい鶴見済の新作。傑作。 いきなり覚醒剤不法所持で逮捕されたお話。覚醒剤(けっこう)安全論が、 新鮮で面白い。「自殺なんでも豆知識」がとてもこわい。 この人はとても悲観的な感じの人なのだが、 でもそれをうなずかせるエピソードがひとつ。
この人は小学校の横に住んでいるのだが、運動会やプールの拡声器の音が うるさかったそうだ(私も小学校の近くに住んでいたのでよくわかる)。 学校に抗議したり市に抗議したりするが、とりあってもらえない。 騒音測定もしてもらい、条例規制値を越えていることもわかるが、 改まらない。ついに頭にきた著者は「まったくおだやかな気持ちで」 プールサイドにビールの空き瓶2本を投げ込む。ビンが割れた音が聞こえる。 そして、なんとその翌日から音が止んだのだ。
ふざけた話だ。こういう矛盾をこの人は監獄社会と呼んでいるのだと思う。 で、この本の半分はレイヴ紀行の文章だ。ダンスで身体を開放するのだという 考えらしい。面白い。

「商人」
岩波新書の永六輔シリーズで今回のが一番肌に合わなかった。商人気質というのと 無縁なんだろうか。

「空飛ぶ山岳救助隊」
山岳救助隊のヘリコプターにのる人の話だが、山岳救助隊の活動そのものよりも メインとなる人物像がメインだったので期待はずれに終わったのは、勘違いした こちらの責任。山はいいよにゃー。

「ハッピー・マニア(6)」
ずっと「モモコ」だと思っていたらM下さんより「モヨコ」だと教えていただいた。 恥ずかしい。相変わらず細かいギャグも冴える純愛(?)ラヴストーリー。

「清水ミチコの顔マネ塾」
あの顔マネ塾が宝島文庫で再登場。新作も登場。とにかく立ち読み一ページすれば 感動すること請け合い。

「夏の風にのって」
夏休みの課題図書として読む(夏休みはなかったが)。 小学5,6年向け。これがくさった本で、 こんなものを読まされる小学生がかわいそうだ。前半とキャラクタは 村上春樹の「ダンス・ダンス・ダンス」からのパクりであると断言しよう。 後半は四万十川の川下り。テーマも不明。ひでえ。
ちなみに記憶に残っている課題図書は、六点点字を発明した人の本 「めがみえなくても」(だったかな?)と、 「せんせいのつうしんぼ」という先生のラヴストーリーだ。 でもよく考えると「せんせいのつうしんぼ」もカレーとお蚕の話 しか覚えてないぞ。こんなもんだったかな。

「情と理(上)(下)」
後藤田正晴の一生インタビュー。すげー面白い。 昔から父が「こいつぁーキレるぞ、旧内務省出身だから怖いぞ」と 言っていたのだが、自分でこの人がすげーと思ったのは 実はけっこう最近で(政治のことはよく知らないのだ)法務大臣をやったときだ。 死刑執行のハンコを押したのだ。
内務省時代から、左翼活動が盛んだったころの警察官僚時代、 田中派議員時代から最近のご意見番時代まで、こと細かに語られる戦後史は ここに引用したくなるようなエピソードでいっぱいだ。その語り口と 記憶の確かさだけでも、カミソリと言われたゆえんがよくわかる。

「はだしのゲン(1)」
ついにこれまで文庫に! と驚いてオレ的8/15特集で読んだ。 まいった。 少年ジャンプ連載時にも読んでいた記憶がある。 自分の核への恐怖というのは、(よくも悪くも)すべてこの漫画の イメージから形作られて いるのを思い知った。同様のことを会社のY口さんも言っていた。 溶ける人。髪が抜ける人。ガラスが身体中刺さった人。 押しつぶされた家で生きたまま焼かれる人。自分の核のイメージは これだ。 ハリウッド映画に違和感があるのはこれの影響だ。 少年マガジンのドキュメントコミックシリーズやMMRなんてメじゃない。 夢にまで見てしまった。続巻も出ていたが買えなかった(こわくて)。

「定本岳物語」
岳物語の二つをまとめたもの。そのむかし、 集英社のPR誌の「青春と読書」(すげー名前だ)に載っていた「続・岳物語」発刊 イベントに当たって、見に行ったことがある。奥さんの渡辺一枝は着物姿で かっくいかった。 そのときの椎名誠の話で、岳くんには葉ちゃんという姉がいたが、私のことは 書くなと言われて書かなかったことや、ちょうどこのイベントの少し前に 岳くんがとても怒ったことを聞いた。 イベントは木村晋介の「岳が親離れしちゃった音頭」で幕を閉めたのだが、 この本の最後にその岳くんの複雑な気持ちが書かれている。もうこの文章が とてもよくできていて感動した(しかし、この中に出てくる学校の先生 信じられないほどばかだ)。本体の岳物語を読んだ人にも お勧めだ(本人は読んでほしくないといっておるのがなんともいえないが)。 椎名誠と息子の友情のお話(書いていて恥ずかしいが今回はセーフ←なにがだ)

「囚人狂時代」
単行本が見つからなかったら知らん間に文庫本に。右翼一水会の 「天皇ごっこ」を書いた見沢氏の獄中記。「獄の息子は発狂寸前」と違うのは こちらは拘置所、刑務所生活やそこで見た人々について重点を 置いて書かれている点だ。金属バット殺人のIや、連合赤軍のYについての エピソードなど。面白い。日本は治安はいいわりに刑務所待遇が先進国にしては 問題があるとよく言われるが、なぜかよくわかる。 最後の刑務所の心得も勉強になる。
なお鈴木邦男と同様、最後に著者のオフィスの住所が書かれているのはさすが。

「前略、押井守様」
私は小学五年生?の「宇宙戦艦ヤマト」以来アニメーションというものを 観ずに生きてきた。 したがって同世代の重要なコミュニケーションタームであるガンダム話など さっぱりわからない。そんな私に同じバイトをしていたオタクのE口くんが、 だまされたと思ってみてみなさいと渡したのが押井守監督の 「パトレイバー2」という映画だった。 これは感動して唯一の例外になった(その後エヴァンゲリオン騒ぎ でもう一つ例外が増えた)。でその押井守という人の読本。
ところがー、アニメーションというものの製作過程とかシステムをよく 知らないし、そのほかのものを観たことがないから、彼が作画監督をしていた とかいわれてもさっぱりわからんのだ。

「イーグル(2)」
十巻くらいにならないとストーリがよくわからんかも。

「ハッピーマニア(3)(4)(5)」
面白い面白い。重田さんを二十代女性版の花井カオルと名づけたい。 テンション高くハッピーになろうとする(がどこか問題ある)シゲタさんと、 タカハシくんの勘違いした一途さの姿がすばらしい。 シゲタさんのギャグも大変私好みでいい。

「総理を殺せ(1)」
タイトルに惹かれて買った漫画。2024年から1995年にタイムスリップした 主人公が、将来の総理大臣を殺そうとする話(らしい)。設定は面白いが、 続きを買う気にならないのはなぜだ。
なお阪神大震災が1995年1月17日の朝に起こったというのは多くの人が 記憶にとどめていると思う。過去にタイムスリップしたときには 証明に役に立つであろう。

「軍靴の響き」
こりゃひどい。マージャン漫画時代より以前に描かれたのを復刻したらしく、 絵がド下手で、内容も演出もクソもあったもんじゃない。p.159の WELLCOME(ママ)ってなんだ。西イリアン語か? 20年は前とみた。 昔の漫画を出すのはかまわないが、表紙だけは今のかわぐちかいじの絵なのだ。 だまされた。今絵が下手な人も10年がんばれ、といいたいのかも。 登場人物に一部「沈黙の艦隊」と同じのがあるのだけは興味深い。

「危ない28号」
「危ない1号」とは別物なのか。薬物よりもハッキング特集。 ハックの話は対象がわからん。sendmailの設定が できる人が読んでもいまさらであろうし、初心者が読んだらさっぱりであろう。 「完全覚醒剤製造講座」が面白かった。

「アッカ!!」
中田責任編集の新潮45別冊。中山美穂との対談やお部屋公開、マスコミ批判の 話は読み飛ばしたが、サッカーについての項がとても面白かった。 海外にいってもがんばってほしい。

「超クソゲー」
クソゲーとはつまらんゲームのことである。私は 一度だけ投げたくなるくらい悔しかったゲームがある。はじめてファミコンを 買ったときに「ドラクエ」だけじゃなーといっしょに購入した「仮面ライダー倶楽部」 である。一面もクリアできないほど難しいのにセーブもできず、数千円した そのソフトを結局最後まで一面しか見ることができなかった。そういう クソゲーについてまとめたもの。ところが知らないゲームばかりで、 それがクソゲーである所以についての 文章を読んでもわかりにくいので、面白くなかった。このへん↓の文章術を 見習ってほしい。

「トンデモ一行知識の世界」
「牛耳るという言葉は夏目漱石の造語」などという一行知識を集めたもの。 文庫本なんかにある「豆知識」を集めた本が大嫌いだ。これで物知りだっ、 みたいな勢いであったりする。ところが、この本はさすが唐沢俊一だけあって、 一行知識のまとめ方や、それら紹介する文章が面白い。同じ一行でも 書き方によって面白さが変わる考察など。トマソンに赤瀬川 原平の解説がつくと途端に面白くなるような感じ。面白かった。 「働きバチが働くのは一日五時間である」わははははは。

「沢野絵の謎」
沢野ひとしの絵はとても好きなのだが、この本はいかがなものか(ここ一年 くらい「いかがなものか」がマイブームなのだ)。絵ひとつひとつについて、 本の雑誌のおやじたちが対談するのだが、さっぱり面白くない。読むな。

「国際おたく大学」
さまざまなオタクについての文章をまとめたもの。序文であるとおり、 その内容の濃さや、「研究報告」に値するかなどにばらつきが多い。 たとえば「声優論」や「ロボ学」は出てくる人物にしろ固有名詞にしろ さっぱりわからんので流し読み(アセンブラでインテルの石だから コンティニュエーションで飛びまくるんだよね)。
が、素人が読んでも面白かったのがいくつかあった。少年マガジンの アンケートについて研究した項目、小学生の子供がいる親くらいしか 知らないコロコロとボンボンという子供雑誌の戦いなど。

「醜聞清書」
風吹ジュンから細川ふみえまでスキャンダルについてまとめたもの。 最初のころはその人の出身であるとか、暴力団のようなプロダクションの いざこざの話が多かったのだが、最近になるとそういうものは姿を消し、 たんなるやっかみ(性格が悪い、とか)になっているのがわかる。 なんかやーな気持ちになるので体調悪いときは読まないほうがいいかも。 芸能界にあこがれてしまった娘さんに貸してあげるといいかも。

「スプリガン(1)」
大友克洋総監修で映画化、と張り紙があったので試しに一巻を買う。 絵はうまいがまったく面白くない。

「コミックカメダス両津一族特集」
最近増えてる「総集編」モノの両津一家のアンソロジー。はじめて総集編モノを 意識したのは「沈黙の艦隊」のころだ。先が読みたくてコミック化より前に こっちを買っていた。「はじめの一歩」なども出ている分はいいが、 さいきん「めぞん一刻」の総集編モノを見かける。どうなっておるのだ。

「こちら葛飾区亀有公園前派出所(109)」
サバイバルゲームの老人チームの話に大変ウケました。

「パパパパPUFFY」
ファンなので買う。とくに面白い話でもないのだが、ぼけ具合がとてもはまるときが あった。どちらがいい、というのはなかったつもりだったが、読んでいるうちに 大貫亜美の方がいいな、と思った(何言ってんだよおれ)。 しかし、ということは、これまでの傾向からいうと 大貫亜美の方がケイちゃんでミキちゃんなのか!?

「理由」
「レディ・ジョーカー」と並ぶ今年の大収穫だと本の雑誌で読んで買う。 こりゃすごい。面白い。
週末に偏頭痛と暑さと鎮痛剤による吐き気に苦しみつつ、 一気に読んでしまった(寝てろよ、と思うなかれ。 病気のときぐらいしか長編読むヒマねーんだよ)。 荒川区の高層マンションで一家四人殺人事件が起こる。そして数ヶ月後、 女子中学生が交番に現れる。という導入部。以下ネタばれなので、 新鮮な気持ちで読みたい人には迷惑でもあるので (私自身ドラクエの紹介記事(最初のボスはこれだ!)でさえ読まんタイプなので) こちら。 ということで5なのである。

「ぢるぢる日記」
五月に惜しくも亡くなったねこぢるの日記。うっかりかわいいネコの絵だと思って 買った人が驚く姿が目に浮かぶ。残酷で冷ややかなねこぢる漫画を書いていた人の 日常。その作品世界を知っている人ならばこのネコの絵をかわいいとは とても思えないはずだ。オレもそうだ。ちょっと怖い。ちなみにシール付。 かなりエキセントリックな人だったようだが、 奇妙なことばかり遭遇しているのがすごい。観察力とやはりそういうのを 呼んでしまう人なのだろうか。
「なんでもどんだけでもつなげる」ACアダプターは私もほしい。マジでこれ どこか作らないか。

「戦空の魂(7)」
7巻が出てる。輸送機パイロット、ソ連参戦時の中ソ国境の日本軍とその家族、 片翼帰還を果たしたパイロットの話、の3本です。ウガググ。 今回はあまり感動しませんでした。

「ハッピー・マニア(1)(2)」
評判は聞いていたが、買いたくてもなかなか恥ずかしくて買えなかった (照れるなよ)。最近ドラマ化されたとかでコンビニに置いてあったので買う。 面白い面白い。 これ読んでみて思ったのだが、タイトルがいい。まさにハッピーマニアの 重田さんの物語。うっかりすると20代女性版「BOYS BE...」 (テンテンはヤメロ)になってしまうところだが、大丈夫。面白かった。

「ありがとう大五郎」
淡路島の奇形猿の子供を育てたカメラマン一家の話と写真。表紙に 惹かれて買った。写真はさすがにうまい。文章は下手。 挿入されている子供たちの正直な作文はなかなかいい。 で、どのへんがありがとうなのかわからなかった。


No.
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