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スナフキン、ドラゴン、ペ・ヨンジュン、その他の短編

からっぽの世界

金麦のCMが実は暴力夫のDVで意識不明の重体になってしまった気の毒な女性の妄想を映像化した説とかそういうのを聞いたことある。ひどい話だけども、それをどこかで読んでから、あのCMが怖くて仕方ない。

私の父は倒れてから一ヶ月くらいで亡くなった。人工呼吸器でつながれたあの一ヶ月で父はなにか走馬燈のようなものを見ただろうか、とずっと気になっている。下の子は北海道で生まれたばかりで見舞いにこれなかったので、写真をベッドの横に貼っておいた。父は一瞬でも意識の端で最後の孫の顔を見ただろうか。

ムーミン谷の話。

スナフキンは旅人という設定だけど、実際はいつも近所の川にいる。あれは旅人というのはスナフキンの妄想で、でもムーミン谷の人々は優しいからその妄想を壊さないでいてあげているのだ。

当然、釣り針には一度も魚はかかったことはない。でもムーミン谷の人たちは親切だ。

「どうだい、スナフキン。釣れるかい?」
「うん、ボチボチだ」

などという会話を一年中している。スナフキンがときに知性的で、ときに世界を受容すべきと大人の立場でムーミンを諭すのは、ザ・ビートルズのFool on the hillと同じで、彼の目は釣り竿の先を見ているのではなく世界が回るのを見つめているからだ。

一方、月を指さすとき、指先ではなくその先にある月の輝きを忘れるな、とイカしたことを言ったのはブルース・リー扮する炎上しているドラゴンさんだ。

私はいまI AMというSNSDも出るSM ENTERTAINMENTのライブ映画(AVEXまつりみたいなもの)を見たくてたまらない。かつて「劇場版ペ・ヨンジュン3D in 東京ドーム 2009」をさんざん笑っていたことを真剣に反省している。

小学校5年生のとき担任の先生に、人を指さしたときに3本の指は自分の方を向いているでしょう、つまり3倍になって返ってくるんですよ、とブルース・リーみたいなことを言われたのを思い出した。40歳過ぎて。SNSDで。

きっとこれから先、私が老人になっても、あと2回はなんらかのアイドル的なものにハマるということを先生は予言していたのだ(ちがいます)。

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肯定論法の奴

伊良湖岬2010

娘が幼稚園で少しきつい言い方をすることがあると婉曲に幼稚園の先生がおたより手帳で伝えてきてくれた。うわー、これ俺の影響じゃね。下の子が2-3歳特有のわがまま期で、さいきんキツめに叱責することが多いのだ。それを真似してるのだ。

とにかく小さい子はすぐ真似する。親の挙動、言動を学習する。ある日、3歳の息子が「あの赤いヤツをとってきて」とか五歳の娘が「あのかっこいいヤツね」とよく言うことに気づいた。やべえよ、俺の影響だよ。ちょっと気になるのでどうやって矯正するか悩む。

私は、ある日思い立って二人に言ってみた。「『ヤツ』という言葉は不愉快な人がいるし、乱暴な言葉なのであまり使わない方がいい言葉だ。お父さんも使ってしまうことがあるけども良くないね」と。

二人は真剣に聞いてる。

「だからね」と私は続ける。

「これから『ヤツ』という言葉は使わないようにしよう。これから『ヤツ』と言ったらヤツポンだ。『ヤツ』と言ったら、おでこを『ヤツぽーん!』と叩いていいことにしよう」「うん、わかった」と姉弟は声をそろえる。いい子たちじゃないか。

「練習してみよう。ほら言ってごらん」「ヤツ」「ヤツぽーん」わはははは「では今度は父ちゃん言うからな」「うん」「ヤツ」「ヤツぽーーーーん」わはははは。けっこう面白い。「ようし、決まりだ。じゃあ今日から『ヤツ』と言ったらヤツポンだぞ」「うん」

で、どうなったかと言うと、その日から子供たちは一度も「ヤツ」と言わなくなった。すげえよ。けどそれじゃゲームがつまんねえよ、とかすっかり手段が目的化してしまった。そう、賢明なる皆さんはお察しかと思いますが、とにかく私がことあるごとに「そこの向こうのヤツとって」「ヤツぽーーん」「洗濯機のしたにあったヤツで」「ヤツぽーーん」「昨日もってきたヤツがさー」「パパヤツぽーーーん」まあ一時間に一回はヤツポンされる羽目になった。なんだ私はとんだヤツポン野郎だったわけだが、さらに可笑しいのはうちの奥さんもちょっとダラけるとヤツポンだったのだ。私より数がすくないもののけっこう使っているのがわかった。

なんだったっけ。

叱責の話だ。

子供のわがままについ強く対応しがちだけども、それはあんまりよくないというのは知っている。最近もちょっと内輪で話題になっていたけども、こういうときは肯定論法で対応すべきだ。肯定論法というのは正しい言葉かわからない。街のファシリテータからサンデルさんまでよく使う、 “Yes and … question?”、「(そうだね|なるほど)、では○○はどうだろうか?」というパターンだ。またこれが難しい。全員に目的意識がある職場ではよほどのことが無い限りこれで議論が転がるけども、ほんの少し前まで人間というより動物、そうアニマルというカテゴリにいた子供たちがそんな簡単にいくとは限らない。

で、先日の朝、妻が作ったおむすびをなかなか食べないと言ってたので、通常であれば「屋久島に行くか?」と脅すところであるが、試しに肯定論法をトライしてみた。なぜ屋久島なのかは話せば長くなるけど、ただいま屋久島は息子の恐怖ワードになっている。いつまでもおむすびについている梅がやだとか言うので(本当は梅干しが好物)さじを投げかけたが、では父ちゃんは今から支度をがんばってするから、君もがんばって食べてみるか?と言ったらうなずいた。うなずいた、今うなずいたよ。よしじゃー競争するぞ、せーの。といって支度して戻ってきたら3つあるミニおむすびのうち2つを食べてた。すげえよ肯定論法。つうかめんどくせえよ子育て。

ただしこれは私だったから、というのがあるみたいだ。奥さんの前ではかなりわがままだそうだから。ちなみに「父ちゃん好き?」と聞くと「好きだけど、怒ってる父ちゃんは大嫌い」と言われた。父親の怖さの演出をどのくらいするか、というのは未だ決まっていない。どうしよう。父ちゃんなんて小心者で根性のないワックだと、化けの皮はどうせ思春期あたりで剥げるだろうけども、それまでな。ホントどのくらいのレベルがいいんだろう。ナチュラルボーン・ヤツポンの苦悩はまだまだ多い。